私は、起業家としてこれまで、「楽天市場」をはじめとする数々の事業を立ち上げてきました。どれも様々な思いがあってのことでしたが、楽天メディカルもまた特別な思いをもって立ち上げました。
2012年、私の父は末期のすい臓がんと診断されました。当時、私は、なんとか父の病気が完治できないかと、日本国内だけではなく、世界中の最先端の治療法を探していました。
そんな中、出会ったのが、米国国立がん研究所(NCI)の小林先生でした。小林先生は、「がん光免疫療法」の研究を進められた方で、先生の研究は今まで聞いたことがない全く新しい治療法でした。 そして、当時、がん光免疫療法は、米国でミゲル・ガルシア・グズマンが率いるアスピリアン セラピューティクス社にライセンスアウトされ、実用化に向けた治験を開始するため、開発資金の出資者を探していること知りました。すぐに、研究を加速させるために、個人的な支援を決めました。
私にとって、この革新的な治療法と出会ったときの衝撃は、はじめてインターネットに出会った時に受けたものに等しいものだったからです。
開発は加速しましたが、残念ながら、父の治療には間に合いませんでした。
しかし、父のように苦しむ人をひとりでも救いたい。 「貧富の差にも関係なく、世界中で、誰でもアクセスできるそんな医療の構築を目指したい」 そう強く思うようになりました。
そして、2019年、がんを克服すると言う大きな目標を掲げ、医薬品・医療機器分野で世界一となるという決意を込め、現在の「楽天メディカル」が誕生しました。
アントレプレナーシップを発揮して、ヘルスケアビジネスにイノベーションを起こす
楽天の創業以来、私が最も大切にしていることは、アントレプレナーシップ(企業家精神)とイノベーションです。それは、楽天メディカルにも欠かせないテーマです。
私は、がん治療という分野のあらゆる仕組みに対して、イノベーションを起こしていきたいと考えています。ヘルスケアビジネスについて学べば学ぶほど、本当にたくさんの可能性があることを感じています。
分野が違うからこそ、今まで培ってきた“企業家ならではの視点”や、医療界以外で築いてきたネットワークも生かせると思っています。
医薬品・医療機器の開発のみならず、各国の医療システムの課題に取り組んでいくことで、国や、貧富の差に関係なく誰でもアクセスできるような医療システムの構築を目指していきたいと考えています。
そしてもう一つ、楽天メディカルにおいて、とても大切にしなくてはならないと思っていることは、「スピード」です。
新しい治療の選択肢は、患者さんだけではなく、そのご家族にとって、どんなに待ち遠しいことでしょう。楽天メディカルが、スピードを重視するのは、患者さんのひとり、ひとりの命に直結するからです。
今、この瞬間にも苦しんでいらっしゃる患者さんがいることを常に考え、本質的に重要なことを見極めながら、慎重に、しかし、スピード感を持ってやり抜くことを考えなくてはなりません。
父が残された私に託した「がん克服」という使命を果たし、人類に貢献したい
経済学者だった父が、常々言っていた言葉があります。それは、「企業の使命は、人類への貢献である」という言葉です。これは、私の企業家人生を支えるものでありました。 そして今、家族として共にがんと闘った父が、私に与えてくれた新たな使命でもあると感じています。
がんを患う人、そして、愛する人を助けたいと願う人が、今この瞬間にもたくさんいらっしゃいます。彼らの気持ちを痛いほど知っているからこそ、この革新的な治療法を一日でも早く、一人でも多くの人に届けたい。「がんを克服する」夢を、同じ夢を持つ皆さんと共に果たしていきたいと思っています。